×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
■富豪都市・ラウラカ―アビ五百年栄華の最後の砦―
ドレパエル=フリティラリア 男 25歳
フリティラリア家当主にて、富豪都市ラウラカのトップの大貴族。通称エル。
貴族達の評議会の代表であり、対白瀧勢力の先導者。アビに戦火を齎した新領主・白瀧を激しく憎悪している。
東国ミセリコルディアの敬遠なる信徒であり、教祖シィーラを神のよう父のよう慕う。彼のような神聖な国家を築くのが理想。
常に穏やかな笑顔を絶やさない紳士だが、自分の阻害となる者には極めて残虐で冷酷。
得意魔法:精霊魔法(氷) 所持武器:剣(エペ)
ユニムーレ=コルニッサ 女 19歳
五年前のクーデターによって粛清されたコルニッサ家の唯一の生き残り。通称ユニ。
貴族令嬢であるが武術を好み、特に剣術の腕は男顔負けである。『じゃじゃ馬姫』と呼ばれる。
エルの元婚約者であったが、コルニッサ家断絶を理由にエルの養父に強制破棄された。
現在は父の友人であったクルームベ家に厄介になっている。一人娘のアリアテとは姉妹のような仲であり、実は彼女を一人の女性として愛している。
あまり表情を変えないが、胸の内は正義感の強い、熱烈で真っ直ぐな性格。
所持武器:剣(サーベル)
デューン=デゼルト 男 39歳
小貴族。家格はあまり高くない。水源機関ダリカの『元副所長』
新たな浄化装置を発明するも、更なる環境汚染を招きかねないハイリスクな装置であった為、当時所長であったマエストロに反対され、対立。その結果ダリカを解職された。
その為、ダリカと現所長トゥルソリー、そしてマエストロを激しく憎んでいる、実は父はマエストロ母の元恋人。
性格は怒りっぽく苛烈、卑屈であるが、職務に対しては人一倍努力家であった。
得意魔法:精霊魔法(雷) 所持武器:サブマシンガン
チーニェ=フォローテ 女 22歳
名家の令嬢。典型的なアビ貴族。
選民思考が非常に強く、下々の者を虐げるのが大好き。残虐な嗜好で、自分に歯向かうものは花火にして打ち上げる。『貴族以外に生まれてきた、下賎な価値の無い命の最後を、華々しく飾ってあげる』という、彼女なりの温情らしい。
物腰は優雅だが、傲慢で華美好き、すぐに人を見下す性格。ですわ口調。
得意魔法:黒魔法(花火) 所持武器:日傘型火筒
シャグマ=カマン=アンボイナ 男 100歳近く
大貴族。元カマン城の主。
毒専門の魔術師であり、また毒性魔物のコレクターでもある。
十数年前ヴェルヒフに殺害されるも、ある契約により蘇生&若返り、以来彼を執拗に狙っている。
残酷で利己的、そして執着心が強い性格。
得意魔法:精霊魔法(毒) 所持武器:毒性魔物
■東国ミセリコルディア―神聖なる教えが飛び交う国―
ジョン・ドゥエ 男 30代半ば(魂は約500歳)
機械都市プロメテアの権威・セリェブロー(銀閣)の部下。
愛想がよく人付き合いが盛んであるが、その反面秘密主義で謎が多い。混乱を招くところから『黒信号』の異名を持つ魔術師。
その正体は五百年前、アビにてシャサ王に仕えた大賢者の一人である。『魔術師狩り』にて処刑されるも外法により転生を繰り返す。現在が100回目の生である。
グールグーラとは生前から犬猿の仲である。
得意魔法:闇魔法(詳細不明)
■カオン・デ・グアルダ―皇族の番犬、魔法の源、マナを探る研究集団―
ディオミス/黄兎(キト) 女 十~二十代?
兎型の獣人。カオン・デ・グアルダの研究員。
研究対象は地殻の穴掘り兎。本名は黄兎であるが、現在はディオミスと名乗っている。
出身はアビであるが、そのことを誰にも告げていない。数十年前の獣人狩りで故郷を失い、幸運にも学者夫婦に拾われ我が子の様に育てられるも、ある事件で学者夫婦が王家に対する反逆罪で処刑され、二度も親を奪われた彼女は激しくアビを憎むこととなる。
普段は温厚で寂しがりや、大人しい性格。だがアビが関わると、好戦的で嗜虐的な性格に一転する二重人格少女。
所持武器:巨大鋏
■秘密結社パーボ・レアル―歌と踊りと冒険者達の集い―
アルゴス 男 年齢不詳
『秘密結社パーボ・レアル』のリーダー。通称船長。
とても陽気で友好的で好奇心旺盛、歌と踊りが大好きな冒険者。
実は正体は孔雀竜と呼ばれるドラゴン。
秘境に隠れ暮している種族であるが、ひきこもりが性に合わなかったので、故郷から飛び出して数百年。冒険が僕を呼んでいるのだ!
得意魔法:精霊魔法・白魔法(詳細不明)
チュチュ 女 3、4歳
『秘密結社パーボ・レアル』の団員。通称リトルチュチュ(船長命名)
ハーピーの幼女。パーボ・レアルで一番幼い冒険者。
群れからはぐれた迷子で、船長に保護されて以来故郷を探す旅を続けている。
おしゃまさんで船長以上に好奇心旺盛。団員が皆大好き。特に大好きな船長のお嫁さんになることが将来の夢。
得意魔法:精霊魔法(風を呼ぶだけ)
■皇族―大陸の守護を司る一族―
ピエリスバッド 男 16歳
皇族四兄弟の三番目、次男。通称エリィ。
民を心から慈しみ、守護救済するために魔術を酷使し続けた結果、体の機能と視力が酷く減退した。魔法の代価は自身に全て跳ね返るものであったが、彼は後悔していない。
とても穏やかで心優しい性格であり、また極端な利他的思考。ピエリスの花言葉は『献身』と『犠牲』である。
背後に浮く光源の中にいるため、常に逆光である。
得意魔法:皇族魔法(治癒)
フリティラリア家当主にて、富豪都市ラウラカのトップの大貴族。通称エル。
貴族達の評議会の代表であり、対白瀧勢力の先導者。アビに戦火を齎した新領主・白瀧を激しく憎悪している。
東国ミセリコルディアの敬遠なる信徒であり、教祖シィーラを神のよう父のよう慕う。彼のような神聖な国家を築くのが理想。
常に穏やかな笑顔を絶やさない紳士だが、自分の阻害となる者には極めて残虐で冷酷。
得意魔法:精霊魔法(氷) 所持武器:剣(エペ)
五年前のクーデターによって粛清されたコルニッサ家の唯一の生き残り。通称ユニ。
貴族令嬢であるが武術を好み、特に剣術の腕は男顔負けである。『じゃじゃ馬姫』と呼ばれる。
エルの元婚約者であったが、コルニッサ家断絶を理由にエルの養父に強制破棄された。
現在は父の友人であったクルームベ家に厄介になっている。一人娘のアリアテとは姉妹のような仲であり、実は彼女を一人の女性として愛している。
あまり表情を変えないが、胸の内は正義感の強い、熱烈で真っ直ぐな性格。
所持武器:剣(サーベル)
小貴族。家格はあまり高くない。水源機関ダリカの『元副所長』
新たな浄化装置を発明するも、更なる環境汚染を招きかねないハイリスクな装置であった為、当時所長であったマエストロに反対され、対立。その結果ダリカを解職された。
その為、ダリカと現所長トゥルソリー、そしてマエストロを激しく憎んでいる、実は父はマエストロ母の元恋人。
性格は怒りっぽく苛烈、卑屈であるが、職務に対しては人一倍努力家であった。
得意魔法:精霊魔法(雷) 所持武器:サブマシンガン
名家の令嬢。典型的なアビ貴族。
選民思考が非常に強く、下々の者を虐げるのが大好き。残虐な嗜好で、自分に歯向かうものは花火にして打ち上げる。『貴族以外に生まれてきた、下賎な価値の無い命の最後を、華々しく飾ってあげる』という、彼女なりの温情らしい。
物腰は優雅だが、傲慢で華美好き、すぐに人を見下す性格。ですわ口調。
得意魔法:黒魔法(花火) 所持武器:日傘型火筒
大貴族。元カマン城の主。
毒専門の魔術師であり、また毒性魔物のコレクターでもある。
十数年前ヴェルヒフに殺害されるも、ある契約により蘇生&若返り、以来彼を執拗に狙っている。
残酷で利己的、そして執着心が強い性格。
得意魔法:精霊魔法(毒) 所持武器:毒性魔物
■東国ミセリコルディア―神聖なる教えが飛び交う国―
機械都市プロメテアの権威・セリェブロー(銀閣)の部下。
愛想がよく人付き合いが盛んであるが、その反面秘密主義で謎が多い。混乱を招くところから『黒信号』の異名を持つ魔術師。
その正体は五百年前、アビにてシャサ王に仕えた大賢者の一人である。『魔術師狩り』にて処刑されるも外法により転生を繰り返す。現在が100回目の生である。
グールグーラとは生前から犬猿の仲である。
得意魔法:闇魔法(詳細不明)
■カオン・デ・グアルダ―皇族の番犬、魔法の源、マナを探る研究集団―
兎型の獣人。カオン・デ・グアルダの研究員。
研究対象は地殻の穴掘り兎。本名は黄兎であるが、現在はディオミスと名乗っている。
出身はアビであるが、そのことを誰にも告げていない。数十年前の獣人狩りで故郷を失い、幸運にも学者夫婦に拾われ我が子の様に育てられるも、ある事件で学者夫婦が王家に対する反逆罪で処刑され、二度も親を奪われた彼女は激しくアビを憎むこととなる。
普段は温厚で寂しがりや、大人しい性格。だがアビが関わると、好戦的で嗜虐的な性格に一転する二重人格少女。
所持武器:巨大鋏
■秘密結社パーボ・レアル―歌と踊りと冒険者達の集い―
『秘密結社パーボ・レアル』のリーダー。通称船長。
とても陽気で友好的で好奇心旺盛、歌と踊りが大好きな冒険者。
実は正体は孔雀竜と呼ばれるドラゴン。
秘境に隠れ暮している種族であるが、ひきこもりが性に合わなかったので、故郷から飛び出して数百年。冒険が僕を呼んでいるのだ!
得意魔法:精霊魔法・白魔法(詳細不明)
『秘密結社パーボ・レアル』の団員。通称リトルチュチュ(船長命名)
ハーピーの幼女。パーボ・レアルで一番幼い冒険者。
群れからはぐれた迷子で、船長に保護されて以来故郷を探す旅を続けている。
おしゃまさんで船長以上に好奇心旺盛。団員が皆大好き。特に大好きな船長のお嫁さんになることが将来の夢。
得意魔法:精霊魔法(風を呼ぶだけ)
■皇族―大陸の守護を司る一族―
皇族四兄弟の三番目、次男。通称エリィ。
民を心から慈しみ、守護救済するために魔術を酷使し続けた結果、体の機能と視力が酷く減退した。魔法の代価は自身に全て跳ね返るものであったが、彼は後悔していない。
とても穏やかで心優しい性格であり、また極端な利他的思考。ピエリスの花言葉は『献身』と『犠牲』である。
背後に浮く光源の中にいるため、常に逆光である。
得意魔法:皇族魔法(治癒)
PR
■主要メンバー
白瀧(シララキ) 男 25歳前後
現アビ領主。五年前のクーデターにて王族貴族を粛清した革命軍の元リーダー。
国民の支持が高く、アビを改革する為日夜励んでいるが、一年前『白蝋病』を患っていることが発覚。以来ドクターの使役魔法によって体の自由を得ているが、既に体の何割かは蝋化している。
口数は少ないが、割と激情型。親しい者にはよく笑顔も見せる。ちょっと天然。あと甘党。
得意魔法:精霊魔法(炎)体中に、幼少時母によって施された魔法の焼印がある。
壱(ハジ) 男 30歳前後
アビ軍の諜報や取次ぎ役など、外交を主に勤める。革命軍元メンバー。
面倒見が良く、頼り甲斐のある存在で、仲間内では兄貴分として慕われている。
白瀧とは孤児時代からの仲で、親友であり兄弟のような、深い絆で結ばれている。
一年前、西国コキュートスに諜報活動に向かったまま、行方不明となっている。
得意魔法:精霊魔法(闇)
九十九韻(ツクモイン) 男 30代前半
領主白瀧の参謀及び主治医。通称ドクター(但しモグリらしい)革命軍元メンバー。
バイでド変態、自重しない発言から怪しい人物として敬遠されることが多いが、いざという時には最も頼りになる人物。
常に飄々とし、周囲に腹を割らない態度から悪い方面に疑われることが多いが、その実誰よりも白瀧を慕う忠臣である。
現在は白瀧の病の治療法を模索しながら、彼の体を動かす為の魔術を開発している。
得意魔法:闇魔法(使役(但し人体に限る))
■アビ軍―戦争狂国家の主戦力―
磊々(ライライ) 女 100歳以上
人型ストーンゴーレム。アビ軍、白兵部隊の隊長。通称『姐御』『岩の姐さん』
百年前、当時のアビ王妃ミケリアに恩を受けて以来、軍に身を置きアビの為に戦い続けてきた。
しかし、ミケリア亡き後の王家の悪政に疑問を抱き、悩み続けた結果、革命軍に離反。
現在は親友のノキと主に白瀧に仕えている。ド怪力。身長2メートル強。
いかつい面だが、根は優しく面倒見も良い。正義感が強く、岩のように頑固でもある。
得意魔法:精霊魔法(岩石)
赤犬(アカイヌ) 男 20代?
犬型の獣人。アビ軍において野干(ジャッカル)部隊を率いる。
十数年前に行われた獣人狩りにて故郷を失い、流れ着いた先で野干の群れに匿われ、家族のように育つ。
その為人間を激しく恨んでいたが、現在は白瀧をボスと認め、彼によく懐いている。
行動も考え方も犬寄りで、噛み癖がはんぱなかったが、最近甘噛を会得した。
気性は激しいが、優しく実直な面もある。黒猫・黄兎とは幼馴染。
得意技:体術
■領主館―館に住まう、後方支援と縁の下の力持ち―
ノキ 女 100歳以上
五色羽エルフ。政治長にて、領主・アビ軍へのご意見番。通称「ちびおかん」
百年前、当時のアビ王妃ミケリアに恩を受けて以来、ご意見番として知識と知恵を王家に授けてきた。
しかし、ミケリア暗殺の真相に気付き、王家を糾弾、その末国家反逆罪の汚名を着せられ、投獄された。
クーデターの折救い出され、現在は親友の磊々と共に白瀧に仕えている。大変な博識で、政に詳しい。
外見は少女であるが中身はおかん。口うるさく、干渉癖がある。だがそれも母性ゆえである。
得意魔法:不明
ユタニー 女 18歳
褐色肌のメイド(通称・パンジー)のメイド長。
明るく活発でしっかり者。一人で十人分の働きをこなす敏腕メイド。
主不在時の領主館の留守を、仲間メイド達と共に銃火器を用いて守り抜く。
白瀧に恋する乙女。妙な妄想癖があり、恋のことになると暴走気味。
マーチュン 女 16歳
褐色肌のメイド(通称・パンジー)
恥ずかしがり屋で内気。しかし怪力の持ち主な少女。
ハジに恋する乙女。自分の怪力を知りつつも、女の子として扱ってくれたことが嬉しかった。
リザベス 女 20歳
褐色肌のメイド(通称・パンジー)
穏やかで心優しい。手先が器用。
ユタニーのサポートもしてくれる、メイド達のお姉さん役。
ドクターに恋する乙女。ドクターの苦労や努力を、人一倍理解している。
■職人街・シウゴウ―アビの生産力の要の街―
ヒチジク=ハヌマン 男 三十代半ば~後半
ギルド総長。『黄金猿候(くがねえんこう)』の異名を持つ大商人。
シウゴウのまとめ役であり、実質的支配者。自身が立ち上げた交易商会『金猿組』の総取締役でもある。
快活で人当たりがよく、人脈が豊富。しかし笑顔の裏で腹に一物抱く油断ならない人物。
身分の低い出自だが、その商才と莫大な財力を認められ、特別に貴族名を名乗ることを許されている。実は猿の獣人であるが、それを知る人物は少ない。
得意武器:多刀曲芸
ミヨシノ 女 20台後半
シウゴウにて鍛冶屋を営む女職人。
評判の良い腕前で、彼女の手にかかればどんな頑強な鉄鋼も、子猫のようしなやかになると謳われている。姉御肌で弟子入り志願者が後を絶えない。
元革命軍メンバーで、当時はその技術で軍を大いに支えた。クーデター後は首都を後にし、元いたシウゴウに戻った。それでも白瀧・壱・九十九韻らとは未だ強い絆で結ばれている。
本名は篠(シノ)。屋号である「ミヨシノ」が気に入っている為こちらで名乗ることが多い。
■裏切りの都・トウカトウカ―アビを裏切り、また裏切られた者の住まう街―

グールグーラ 半陰陽 約500歳
トウカトウカの実質支配者。五百年程生きている大魔法使い。
その昔、シャサ王に仕える大賢者の一人であったが、『魔術師狩り』に合い一族諸共処刑された。その後、外法により復活を果たすも、副作用か昼は男、夜は女の半陰陽の体となった。
自分や一族を裏切ったアビを激しく憎んでおり、数百年経った今もその恨みは晴れることはない。
性格は昼は紳士で夜は悪女。快楽主義者であるが、自分の身内や友人には情が深い。
得意魔法:昼(男)→精霊魔法(全般) 夜(女)→闇魔法(不明)
■水源機関ダリカ―アビの水源を司るオアシス―
アルフィーネ=フォンダリカ 男 40歳
水源機関ダリカの元所長。通称『水の奏者(ラクア・マエストロ)』マエストロと敬称される。
現在は元所長に表の仕事を任せつつ、陰ながらダリカをサポートしている。
生まれつき水の幕に覆われており、その為誰も彼に触れられず、また彼も誰にも触れられない。極度の潔癖症でもある。
クールで気難しいが律儀であり、情に厚い一面もある。府長ヴェルヒフとは幼少時からの親友。
得意魔法:精霊魔法(水)
■死泥府カマツキス―酸と毒の総本山―
ヴェルヒフ=ラジアータ 男 40歳
死泥府カマツキスの府長。酸、毒専門の魔術師。
この世のあらゆる毒に対する抗体を持つ特異体質。更に、彼自身が強力な毒素の媒体である為、一般の人間は容易に近づけない。
数十年前、とある街を壊滅させた炎の舌(ゲヘナ)の唯一の生き残り。以来ゲヘナについて研究を進め、また酸毒を用いてアビに貢献している。
性格はお茶目で朗らか。細かいことは気にしない。
得意魔法:精霊魔法(毒)
ジャミラ(仮) 男? 年齢不詳
カマツキスの研究員。毒素で変容した体を元に戻す手掛かりを見つけたく、死泥府に入所した。
性格は明るくお調子者であるが、真面目で熱心。府長とはいいコンビである。円○プロには通報しないで下さい。
ミト(左)リーダ(中)チオン(右) 男 10~20代
カマツキスの研究員。ジャミラの部下にあたる。
お調子者のチオン、まとめ役のリーダ、クールなミトの三人で仲が良い。
■岩窟獄ドーエン―アビ最大の地下炭鉱都市―
リー=イマ 男 29歳
岩窟獄ドーエンの獄長。元奴隷。
十年前『ドーエン解放』にてクーデターを先導し、勝利を収めた。以来ドーエン民から絶大な支持を得ている。
明るく優しい人柄だが、人一倍責任感があり何もかも背負いこむ面がある。
副獄長の穴古とは、奴隷時代からの親友で大変仲が良い。
得意魔法:精霊魔法(土)
穴古 男 30歳
岩窟獄ドーエンの副獄長。元奴隷。
親友であるリー獄長に代わって、厳しくドーエンを管理している鬼副長。それもドーエンへの愛あってこそ。
アナウサギの獣人であり、光に弱い為外出時は帽子とグラサンが欠かせない。
得意技・蹴り技
クラルテ 女 16歳
岩窟獄ドーエンの民。
かつて銅爛病を患っており、体と顔の一部にその時の痕が残っている。
現在は仲間達と、ドーエン産の鉱物織物を作っている。
健気でよく気配りが効く。リー獄長を心から慕っている。
■黒縄砦―アビ最強の砦と牛頭馬頭魔神―
ハーフィル 男 500歳以上
黒縄砦の馬頭魔神。
見かけは少年だが、中身は頑固爺。500年以上アビを守護してきた為、戦闘力が尋常でなく高い。
誰にでも厳しく接するが、礼儀正しく、時折優しさも見せる。特に相方魔神であるズィルテには少々甘い。
ズィルテ 女 100歳以上
黒縄砦の牛頭魔神。
百年程前、黒縄砦に生贄として捧げられたのをハーフィルが哀れに思い養育した。
以来ハーフィルを「兄さま」と慕い、常に一緒にいる。とても力持ち。優しいが少々オバカ。
■アビ王族―五百年に渡りアビを治めた一族―
メシロマハール/テデオハラ 男/女 故人
元アビ国王&王妃。
アビに悪政を敷き続けた愚王と悪妻。五年前の革命軍クーデターにて白瀧に斬殺された。
その首は首都カシャに晒された後、粛清された他の貴族・重臣らと共に国内最大級のヘドロ沼、「アブダ・ウバラ」に沈められた。
モクスニーア・サラティーア・ヴィダリッダ 男/女/女 故人
メシロマハールの三人の子どもたち。
幼いながらもアビの格差社会に疑念を抱いており、三人で良い国を作ろうと誓い合う仲睦まじい兄弟であった。
五年前の革命軍クーデターにて、末妹を守ろうと駆け込んだ子供部屋で、三人諸共白瀧に斬殺される。これを以って、アビ王家の正統な血筋は断絶した。
三人の墓は白瀧の私邸の庭、アビでは稀少な樹木の木陰に眠る。
ミケリア 女 故人
百年前のアビ王妃。若くして夫である国王が病死した為、国王代理となる。
戦の際には軍を先導する、活発で男勝りな性格。そして民を心から慈しみ善政を敷いた、アビ王家で唯一国民に敬われた殿下。
しかし、それを快く想わなかった王室や貴族達から逆恨みを買い、獣人の所為にみせかけ射殺された。
磊々、ノキとは君臣というより親友であり、三人でアビを守ろうと約束を交わしていた。
■旧アビ―五百年前、アビが魔法国家として最盛期であった頃―
ラークシャサ・グル・スレンドラジッド 男 故人?
五百年前のアビ国王。
アビの全盛期を築き上げた偉大なる奇跡の王であり、アビに厄災を持ち込んだ狂気の王とも呼ばれる。
大魔術を駆使し、アビの環境問題を解消するも、それが原因で勃発した三十年戦争の末、親衛隊(十三使途)のクーデターにより暗殺される。
その遺体は無数の剣で貫かれ、罪人の如く枷を嵌められ、アビ最南端の海へ逆さ吊りに投棄された。
現在、最南端はナラカ致死区域が発生している為、その遺骸がどうなったか知る者はいない。
得意魔法:黒魔術・精霊魔術全般。主に引力・斥力・重力を操った。
現アビ領主。五年前のクーデターにて王族貴族を粛清した革命軍の元リーダー。
国民の支持が高く、アビを改革する為日夜励んでいるが、一年前『白蝋病』を患っていることが発覚。以来ドクターの使役魔法によって体の自由を得ているが、既に体の何割かは蝋化している。
口数は少ないが、割と激情型。親しい者にはよく笑顔も見せる。ちょっと天然。あと甘党。
得意魔法:精霊魔法(炎)体中に、幼少時母によって施された魔法の焼印がある。
アビ軍の諜報や取次ぎ役など、外交を主に勤める。革命軍元メンバー。
面倒見が良く、頼り甲斐のある存在で、仲間内では兄貴分として慕われている。
白瀧とは孤児時代からの仲で、親友であり兄弟のような、深い絆で結ばれている。
一年前、西国コキュートスに諜報活動に向かったまま、行方不明となっている。
得意魔法:精霊魔法(闇)
領主白瀧の参謀及び主治医。通称ドクター(但しモグリらしい)革命軍元メンバー。
バイでド変態、自重しない発言から怪しい人物として敬遠されることが多いが、いざという時には最も頼りになる人物。
常に飄々とし、周囲に腹を割らない態度から悪い方面に疑われることが多いが、その実誰よりも白瀧を慕う忠臣である。
現在は白瀧の病の治療法を模索しながら、彼の体を動かす為の魔術を開発している。
得意魔法:闇魔法(使役(但し人体に限る))
■アビ軍―戦争狂国家の主戦力―
人型ストーンゴーレム。アビ軍、白兵部隊の隊長。通称『姐御』『岩の姐さん』
百年前、当時のアビ王妃ミケリアに恩を受けて以来、軍に身を置きアビの為に戦い続けてきた。
しかし、ミケリア亡き後の王家の悪政に疑問を抱き、悩み続けた結果、革命軍に離反。
現在は親友のノキと主に白瀧に仕えている。ド怪力。身長2メートル強。
いかつい面だが、根は優しく面倒見も良い。正義感が強く、岩のように頑固でもある。
得意魔法:精霊魔法(岩石)
犬型の獣人。アビ軍において野干(ジャッカル)部隊を率いる。
十数年前に行われた獣人狩りにて故郷を失い、流れ着いた先で野干の群れに匿われ、家族のように育つ。
その為人間を激しく恨んでいたが、現在は白瀧をボスと認め、彼によく懐いている。
行動も考え方も犬寄りで、噛み癖がはんぱなかったが、最近甘噛を会得した。
気性は激しいが、優しく実直な面もある。黒猫・黄兎とは幼馴染。
得意技:体術
■領主館―館に住まう、後方支援と縁の下の力持ち―
五色羽エルフ。政治長にて、領主・アビ軍へのご意見番。通称「ちびおかん」
百年前、当時のアビ王妃ミケリアに恩を受けて以来、ご意見番として知識と知恵を王家に授けてきた。
しかし、ミケリア暗殺の真相に気付き、王家を糾弾、その末国家反逆罪の汚名を着せられ、投獄された。
クーデターの折救い出され、現在は親友の磊々と共に白瀧に仕えている。大変な博識で、政に詳しい。
外見は少女であるが中身はおかん。口うるさく、干渉癖がある。だがそれも母性ゆえである。
得意魔法:不明
褐色肌のメイド(通称・パンジー)のメイド長。
明るく活発でしっかり者。一人で十人分の働きをこなす敏腕メイド。
主不在時の領主館の留守を、仲間メイド達と共に銃火器を用いて守り抜く。
白瀧に恋する乙女。妙な妄想癖があり、恋のことになると暴走気味。
褐色肌のメイド(通称・パンジー)
恥ずかしがり屋で内気。しかし怪力の持ち主な少女。
ハジに恋する乙女。自分の怪力を知りつつも、女の子として扱ってくれたことが嬉しかった。
褐色肌のメイド(通称・パンジー)
穏やかで心優しい。手先が器用。
ユタニーのサポートもしてくれる、メイド達のお姉さん役。
ドクターに恋する乙女。ドクターの苦労や努力を、人一倍理解している。
■職人街・シウゴウ―アビの生産力の要の街―
ギルド総長。『黄金猿候(くがねえんこう)』の異名を持つ大商人。
シウゴウのまとめ役であり、実質的支配者。自身が立ち上げた交易商会『金猿組』の総取締役でもある。
快活で人当たりがよく、人脈が豊富。しかし笑顔の裏で腹に一物抱く油断ならない人物。
身分の低い出自だが、その商才と莫大な財力を認められ、特別に貴族名を名乗ることを許されている。実は猿の獣人であるが、それを知る人物は少ない。
得意武器:多刀曲芸
シウゴウにて鍛冶屋を営む女職人。
評判の良い腕前で、彼女の手にかかればどんな頑強な鉄鋼も、子猫のようしなやかになると謳われている。姉御肌で弟子入り志願者が後を絶えない。
元革命軍メンバーで、当時はその技術で軍を大いに支えた。クーデター後は首都を後にし、元いたシウゴウに戻った。それでも白瀧・壱・九十九韻らとは未だ強い絆で結ばれている。
本名は篠(シノ)。屋号である「ミヨシノ」が気に入っている為こちらで名乗ることが多い。
■裏切りの都・トウカトウカ―アビを裏切り、また裏切られた者の住まう街―
トウカトウカの実質支配者。五百年程生きている大魔法使い。
その昔、シャサ王に仕える大賢者の一人であったが、『魔術師狩り』に合い一族諸共処刑された。その後、外法により復活を果たすも、副作用か昼は男、夜は女の半陰陽の体となった。
自分や一族を裏切ったアビを激しく憎んでおり、数百年経った今もその恨みは晴れることはない。
性格は昼は紳士で夜は悪女。快楽主義者であるが、自分の身内や友人には情が深い。
得意魔法:昼(男)→精霊魔法(全般) 夜(女)→闇魔法(不明)
■水源機関ダリカ―アビの水源を司るオアシス―
水源機関ダリカの元所長。通称『水の奏者(ラクア・マエストロ)』マエストロと敬称される。
現在は元所長に表の仕事を任せつつ、陰ながらダリカをサポートしている。
生まれつき水の幕に覆われており、その為誰も彼に触れられず、また彼も誰にも触れられない。極度の潔癖症でもある。
クールで気難しいが律儀であり、情に厚い一面もある。府長ヴェルヒフとは幼少時からの親友。
得意魔法:精霊魔法(水)
■死泥府カマツキス―酸と毒の総本山―
死泥府カマツキスの府長。酸、毒専門の魔術師。
この世のあらゆる毒に対する抗体を持つ特異体質。更に、彼自身が強力な毒素の媒体である為、一般の人間は容易に近づけない。
数十年前、とある街を壊滅させた炎の舌(ゲヘナ)の唯一の生き残り。以来ゲヘナについて研究を進め、また酸毒を用いてアビに貢献している。
性格はお茶目で朗らか。細かいことは気にしない。
得意魔法:精霊魔法(毒)
カマツキスの研究員。毒素で変容した体を元に戻す手掛かりを見つけたく、死泥府に入所した。
性格は明るくお調子者であるが、真面目で熱心。府長とはいいコンビである。円○プロには通報しないで下さい。
カマツキスの研究員。ジャミラの部下にあたる。
お調子者のチオン、まとめ役のリーダ、クールなミトの三人で仲が良い。
■岩窟獄ドーエン―アビ最大の地下炭鉱都市―
岩窟獄ドーエンの獄長。元奴隷。
十年前『ドーエン解放』にてクーデターを先導し、勝利を収めた。以来ドーエン民から絶大な支持を得ている。
明るく優しい人柄だが、人一倍責任感があり何もかも背負いこむ面がある。
副獄長の穴古とは、奴隷時代からの親友で大変仲が良い。
得意魔法:精霊魔法(土)
岩窟獄ドーエンの副獄長。元奴隷。
親友であるリー獄長に代わって、厳しくドーエンを管理している鬼副長。それもドーエンへの愛あってこそ。
アナウサギの獣人であり、光に弱い為外出時は帽子とグラサンが欠かせない。
得意技・蹴り技
岩窟獄ドーエンの民。
かつて銅爛病を患っており、体と顔の一部にその時の痕が残っている。
現在は仲間達と、ドーエン産の鉱物織物を作っている。
健気でよく気配りが効く。リー獄長を心から慕っている。
■黒縄砦―アビ最強の砦と牛頭馬頭魔神―
黒縄砦の馬頭魔神。
見かけは少年だが、中身は頑固爺。500年以上アビを守護してきた為、戦闘力が尋常でなく高い。
誰にでも厳しく接するが、礼儀正しく、時折優しさも見せる。特に相方魔神であるズィルテには少々甘い。
黒縄砦の牛頭魔神。
百年程前、黒縄砦に生贄として捧げられたのをハーフィルが哀れに思い養育した。
以来ハーフィルを「兄さま」と慕い、常に一緒にいる。とても力持ち。優しいが少々オバカ。
■アビ王族―五百年に渡りアビを治めた一族―
元アビ国王&王妃。
アビに悪政を敷き続けた愚王と悪妻。五年前の革命軍クーデターにて白瀧に斬殺された。
その首は首都カシャに晒された後、粛清された他の貴族・重臣らと共に国内最大級のヘドロ沼、「アブダ・ウバラ」に沈められた。
メシロマハールの三人の子どもたち。
幼いながらもアビの格差社会に疑念を抱いており、三人で良い国を作ろうと誓い合う仲睦まじい兄弟であった。
五年前の革命軍クーデターにて、末妹を守ろうと駆け込んだ子供部屋で、三人諸共白瀧に斬殺される。これを以って、アビ王家の正統な血筋は断絶した。
三人の墓は白瀧の私邸の庭、アビでは稀少な樹木の木陰に眠る。
百年前のアビ王妃。若くして夫である国王が病死した為、国王代理となる。
戦の際には軍を先導する、活発で男勝りな性格。そして民を心から慈しみ善政を敷いた、アビ王家で唯一国民に敬われた殿下。
しかし、それを快く想わなかった王室や貴族達から逆恨みを買い、獣人の所為にみせかけ射殺された。
磊々、ノキとは君臣というより親友であり、三人でアビを守ろうと約束を交わしていた。
■旧アビ―五百年前、アビが魔法国家として最盛期であった頃―
五百年前のアビ国王。
アビの全盛期を築き上げた偉大なる奇跡の王であり、アビに厄災を持ち込んだ狂気の王とも呼ばれる。
大魔術を駆使し、アビの環境問題を解消するも、それが原因で勃発した三十年戦争の末、親衛隊(十三使途)のクーデターにより暗殺される。
その遺体は無数の剣で貫かれ、罪人の如く枷を嵌められ、アビ最南端の海へ逆さ吊りに投棄された。
現在、最南端はナラカ致死区域が発生している為、その遺骸がどうなったか知る者はいない。
得意魔法:黒魔術・精霊魔術全般。主に引力・斥力・重力を操った。
母は売女であった。父は知らない。本人ですら憶えていないだろう。
物心ついた頃は既に渡り鳥のような生活であった。止まり木は男達のベッド。数日同じ家に居座ることもあれば、一夜だけの縁もあった。時には母だけでなく自分も相手をすることがあった。そういう趣味が、この世にはあるらしい。
ある日、母に馴染みの客が出来た。母は彼を気に入ったのか、連日男の元へ自分を連れて泊り込んだ。自分は屋根のあるところで眠れればどうでもよかった。だがある日、眠りこけた自分の耳元で、母の甘ったるい声が響いた。
「バイバイ、モモ。あんたのママやれて、楽しかったわ」
翌朝、母の姿はどこにもなかった。階下では母の馴染みの客が、素っ頓狂な悲鳴を上げていた。
「あのアバズレやりやがったな…どうすんだよこのガキ」
ボサボサの頭を掻きながら彼が手にする書置きは、何となくその内容が想像できた。
だらしない無精髭を指でいじりながら、渋く顔を歪める男は、やがて思案することが億劫になったのか、すとんと間抜けな表情に落ち着いた。
「…まぁいいか。おいガキ、お前取り合えず、朝飯作れっか?」
「…卵ある?」
幸運なことに、置いていかれた先の母親の客は、どうしようもない物臭な医者であった。
養父となったサザンはトウカトウカの片隅に暮らす街医者であった。
よく治療費を踏み倒されたり薬を騙し取られたりと、つまらない損をしていたが、彼は大抵を「…まぁいいか」の一言で片付けた。寛容というより、単純に面倒臭がりなのだ。
そのトウカトウカは、アビ国内最大の阿片窟を所有する。ある日、サザンの元に重篤な麻薬中毒者が運び込まれた。
「ったく、面倒くせえのがきちまったなぜ。おいモモ、コイツちょっと見ててくれや。薬取ってくらぁ」
こういう奴ぁ絶対治療費なんざ持ってねえのによ。悪態をつくサザンの指示に従い患者に付き添う。
死んだように四肢を投げ出していた男は、何か早口に寝言を呟き出したと思った瞬間、突然暴れだした。幻覚症状か。慌てて押さえつけようと近寄った刹那、男は隠し持っていたナイフを振りかざした。
あっと息を呑んだ、その間一髪。戻ってきたサザンに庇われた。自分を抱きこみ、ざっくりと裂けた養父の腕。
「痛えなバカヤロウ!」患者を薬瓶で殴り倒し昏倒させるサザン。
その深い裂傷と、溢れる鮮血に血の気が引く。ガクガクと震えだした自分に、サザンはとんでもない指示を出した。
「おいガキ、てめえがこの傷縫ってみろや。俺の仕事を間近で見てきたんだ、その位出来るだろ?やってみせろ」
出来るわけがない――思わず後ずさる自分に、しかしサザンの眼差しは有無を言わせない。無理だよそんなこと、そう呟こうとした喉が、思わず針はどこだと呟かされてしまうほどに。
後にドクターと呼ばれる男が、初めて人を治療したのが、この時だった。
人を治療することの偉大さを知ったモモは、この時から改めてサザンに医術を習い、助手として働くことになった。ぶっきらぼうであるが、サザンは腕の立つ名医であった。
やがて医術のいろはを飲み込んだ頃、ある日サザンは急に、メスを落とす。
「どうしたの?」
モモの問いにサザンは。
「腕が動かねえ」
白蝋病であった。
かつての傷が原因であったらしく、蝋化は腕から始まったのだ。ショックを受けるモモ。自分がしっかり消毒をしていなかったから?しかしサザンは言う。この病気は詳しいことが解明されてない。お前の治療がどうという話じゃない。そしてサザンは淡々と、白蝋病について語りだす。
耳を塞ぎたくなるような悲惨な病状に、思わずモモは絶叫する「どうしてそんな他人事のように!あんた怖くないのか!」サザンは静かに遮る。
「どんな病を前にしても平静でいる。それが医者だ」
そしてお前もそうであれ、そして感謝するんだな。未知の病の被験者が、すぐ目の前にいるんだ。そう養父は笑った。
それからは闘病の日々であった。モモは自分と養父の生活を支える為、そして養父の病気を治療するため奮闘するが、この街で少年一人に出来ることなど限られている。白蝋病は進行の遅い病気であるが、それに伴う苦痛は激しい。ある日、家に帰ったモモはサザンを呼ぶ。返事がない。嫌な予感に寝室へ走る。
ドアノブに吊られたシーツに首をぶら下げて、サザンは既に事切れていた。白蝋病の患者は苦痛に耐え切れず、自害することが多いと聞いていた。聞いていたが、まさかこんな。あんた言っただろ、医者は、どんな病を前にしても平静でいろって。
呆然と歩み寄るモモの足が、一枚の紙を踏む。乱雑に書かれた文字は、酷く読み辛かったが確かに養父の字であった。「俺の死体は、好きに使え」
今は殆ど使われていない手術台は、養父の遺体を置くと、薄く積まれた埃が一斉に舞った。短く手を合わせて、メスを手に取る。まだ暖かい肉は、思った以上に張りがあり、刃を滑らすと切断面から鮮血が溢れ出た。顔に飛び散る鮮血を、拭うことなく解剖を続ける。
筋肉、骨格、血管や神経の至る表皮、それらを全て観察しスケッチし、次は更に刃を深く入れ内臓を引っ張り出した。腹圧で位置が乱れないよう、慎重に指を差し入れる。
思った以上の重労働で、力のいる作業であった。滴る汗が目に入って痛むが、殆ど瞬きもせずに解体される養父の姿を、目に脳に焼き付けた。
一日、いや二日以上はかかっただろう。寝食も忘れて作業に没頭した。徐々に人の姿を忘れさせる、養父であった肉塊を前に、淡々と生命の構造を暴いてゆく。それはまるで何らかの儀式のようでもあり、だがそのような神聖さを許さない生々しさを伴っていた。
最後に心臓へ手を伸ばそうとした時、入り口から悲鳴が聞こえた。振り向けば馴染みの患者が、蒼白の表情で腰を抜かしていた。
薬を貰いにでも来たのだろうか。鍵はかけていた筈なのにとぼんやり見つめる。彼は泡でも吹きそうな顔で、慌てて逃げ出していった。人殺し、とも聞こえた気がする。改めてこの場の状況を見返せば、その通りだろう。薄暗い部屋にはバラバラに解体された街医者、血に塗れたその養い子。
ごめんね、墓は作ってやられそうにない。最後まで何一つ、孝行はしてやれなかったよ。
養父であった肉塊に一礼すると、医療用具、医術本、金目のもの手当たり次第に鞄に詰め込む。騒ぎを聞きつけて、警兵どもがやってくる前に、暗い夜の街へと飛び出した。雨が降っていた。アビの雨は有害だが、生憎マスクを手に取る時間はなかった。
走って、走って、脇目も振らず遠くまで走って、どれくらい走ったかは分からない。ふいに体中の力が抜けて、泥濘の中に倒れこんだ。血と雨と泥と、無茶苦茶に汚れながら、呆けて夜空を眺める。目に何度も雨が入って、沁みるのに、閉じれない。
目を見開いたまま、次第に笑い声が湧き上がった。指一本動かせないのに、横隔膜は痙攣して笑い声を捻り出す。腹腔が痛んで、黙っていたいのに、止まらない。
養父として、慕っていた。
医者として、尊敬していた。
一人の人間として、愛していた。
さようなら、忘れない、貴方に貰ったものは全て。
笑い声と雨音が交じり合って、次第にそれは泣き声に変わっていった。養父が死んで、初めて泣いた。悲しいのか悔しいのか寂しいのか、それが何であるのか分からない。母に置いて行かれた日にも感じなかった虚無感が、全身に重く覆い被さって、泥濘の底深くに引き摺り込まれてゆくような気がした。
それを人は孤独と呼ぶ。初めてその日、彼はひとりとなったのだ。
因みに幼馴染の黄兎ことディオミスは現在、アビと敵対する組織にいる。
そんな兎VS犬↓
生き別れになり、最悪死んでいると思っていた幼馴染との、感動の再開は戦場だった(ナレーション)
アビと共に生きてゆく決意をした赤犬と、アビを滅ぼすことをを信念とした黄兎と。
現在は東国ミセリコルディアの機械の街・プロメテアにて、銀閣の部下として働いている。
因みに銀閣はウチの子ではない。
こないだ描かせてもらた。本物はもっとかっけー!
ジョン・ドゥエは生前より権威欲が激しく、その当時自分の主である小貴族並びにシャサ王までも期あらば裏切る気であった。
シャサ王はそれに気付いていただろう。だが王は敢えてジョン・ドゥエに大賢者の称号を授け、グールグーラと共に自分の腹心として重用した。王は力の強いものを好んだからだ。
事実彼の魔術の腕前は凄まじく、戦争時には大いにアビに貢献した。誰しもが彼の強さを讃え、慕い、頼りにしていた。
しかし、彼の主君の一人娘だけは違った。
彼が戦争へ赴くたび、出立の際には悲しげな瞳を曇らせる。
「また戦地へ向かうのですね」
娘は、彼の胸までしかない小さな背丈を、更に丸めて呟いた。
「不安なのですか?―――様」
「ええ…」
ジョン・ドゥエはこの少女を心の底でせせら笑った。何という惰弱なこどもだ。
「ご心配には及びませぬ。私も死力を尽くし、このアビをお守り致しますゆえ」
明るく優しく紡ぐ虚言。それでもこの臆病者には幾らかの気休めになろう。こっそりと失笑するジョン・ドゥエに向かい、突如、娘は俯いていた顔を上げた。
「それでは、貴方を守って下さるのは誰なのです?」
娘の語気の強さに、その意味に、思わずジョン・ドゥエは目を開いた。
少女の頬は―普段ですら赤らんでいるというのに―酷く紅潮して、それに引き摺られるよう瞳までもが赤く潤んでいる。
「どうか、死なないで下さい。私はいつも貴方が無事であるように祈っています。でも私にはそれしかできません。どうか、どうか、死なないで」
懇願するような、祈るような言葉。
返す言葉を喉の奥で迷わす感情は、驚きか呆れかそれとも別の何かか。
二人の対峙する渡り廊下には柔らかい日差しが差し込んで、吊るされた緑が淡い影を落として、それがどうしようもなく美しい光景であったとして、同時にそれが記憶になることは、何とも残酷なものである。
【4】
後ろ髪を引かれるよう、名残惜しげに最後の観客が別荘屋敷を後にしたのは、月が中天に燻る真夜中であった。
マルハバンの季節―この祭りの季節はそう呼ばれる―には残念な空模様であるが、自分にとってこのほの暗さは好機である。
見世物を見逃し、不貞腐れた表情の門番を柱の陰から望みながら、ハジは小さく口の中で呟いた。
「…『融けろ』」
門番がその囁きを聞き咎め、柱の陰に目を向ける。が、濃い闇溜りには誰もいない。
首を傾げる門番の、その背後の闇の揺らめきは刹那。
揺らぎは波紋のように隣の闇へ移り、柱から柱へと渡り、やがて門から遠く離れた別荘屋敷の中庭、作り物の蘇鉄の陰にその動きを止めた。
用心深く息を潜めながら、闇の中に少年の姿が浮き上がる。素早く周囲に視線を走らすと、手近の建物の陰へ俊敏に飛び込み、また闇へと姿を消した。
闇の魔法はハジが唯一使える魔術であった。亡き父が仲間の諜報員に学んだものを、幾つか自分に教え授けたのだ。
我ながら相性がいいと思う。闇を渡る程度の魔法は、戯れ程度に覚えてしまえた。今では盗みに必需となったこの芸を、亡き父が知ればどう思うだろう(などとは考えないようにしている)
それでも幾らかの制限はある。あまり離れた闇へは渡れない。勿論、自分一人でしか渡ることはできない。
それゆえあの見世物ショーの後、訝しげな仲間らを誤魔化し先に帰らせ、自分ひとりがこの別荘に忍び込む羽目となった。
最も盗みの為の偵察ではない。既に建物の構造は、大方把握できた。自分の目的は、そこから少しずれたところにある―――いや。
「場合によっては、そうなるのか」
何となしに口に出た呟きは、豪奢なラグの上に寝そべる太った飼い猫の耳にのみ入った。
【5】
膝に頬を乗せた途端、ひりつく痛みが走った。
この部屋に投げ込まれた際、擦り剥いてしまったのだろう。いつものことと気を取り直して、壁にもたれ目を瞑る。
古い蔵は酷く黴臭かった。きっともう長く使われていないのだろう。高く積まれた酒樽の中身すら空なのかもしれない――その通りに決まっている。
あの用心深い主人が、此処に閉じ込めた子供―自分だ―が毒を入れる可能性を疑わぬ筈が無い。
そんなことが、出来る筈がないというのに。目を微かに開けて、また瞑る。闇に包まれたこの部屋では、明り取りの小窓から入る霞んだ月光さえ眩しい。
ふと―――
「見っけ」
突如、闇の中から声が聞こえ、ぎょっと体を強張らせる。
周囲を見回すも、埃っぽい小部屋の中には自分以外誰もいない。積み上げられた木箱や樽の陰に目を凝らすが、人影らしきものはない。
どこか別の部屋の声が、風に乗って流れてきたのか――一人合点し、傾げた首を元に戻す。
そして目の前にある二つの目と、目がばっちりと合う。至近距離に浮かぶそれは、笑うように弧を描いた。
「すっげえ、本当に白いのな、お前」
あと少しで、声を上げるところであった。
少年が声を上げないことに、ハジは感心した。
それでも動揺は凄まじく、後ずさるも背後は壁と気付くと、少年は小さな犬歯を剥き出しにし、眼を吊り上げ低く息を吐いた。
まるで猫のような威嚇におかしくなりながらも、怯えさせないようハジは一旦闇に消え、やや離れた、積み上げられた樽の上に腰を下ろした。
手品の如く、消えたり現れたりを繰り返すハジに、驚嘆と警戒の色を露わにしながら、少年は一言も発しない。
「そんなに警戒するなよ。言っておくけど、俺はおばけじゃないぜ。そら、立派な足だろ」
「・・・・・・」
ハジは明るく話しかけながらも、微量な光に照らされた少年を、素早く観察した。
ステージで見かけた姿と何ら変わらないが、淡い月光に浮かぶ少年は先程よりも白く見えた。その肌も、髪も。目だけが黒々と光っていて、よく目立つ。
丈の合っていない着物を着せられている為か、華奢な両肩が露わになっている。裾から覗く両手足も、折れそうなほど細い。
それゆえ、彼の風貌はさながら少女のような印象を受けた。だが険しい眼差しは獣のようで、決して少女の持つ柔らかさはない。
その刺すような視線を受けながら、ハジは大仰な手振りで、矢継ぎ早に語り始めた。
「俺はハジってんだ。これでも盗賊団のお頭なんだ、凄ぇだろ?」
「・・・・・・」
「ま、メンバーはみんな俺と同じくらいか、年下ばっかだけどさ」
「・・・・・・」
「お前と同じくらいのもいるんだぜ。ペンダっつって、体は一丁前にでけえんだけど、泣き虫なんだ」
「・・・・・・」
「皆孤児だ。親父もお袋もいねえ。裂けるまでケツを革鞭で叩くような性悪爺をブチのめしてきたのが、新入りのオロンゴでさ――」
「ケチな泥棒が、俺になんの用だ」
発せられた声音に、ハジはたじろいだ。少年の怒気に対してではない。少年のその、幼い容姿に不相応な、しゃがれた声音に身を固くする。
先程の炎で喉を焼かれたのか。いや、その一度ではあるまい。幾度となく熱気に潰され皹入った声帯の、微かに残る幼い響きが酷く切ない。
水の一滴も与えられていないのか、と。ハジは密かに拳を固く握った。食い込む爪の鋭い痛みに反して、柔く口角を上げる。
「俺たちはさ、そんな感じでガキらが集まって出来た、ちっちぇえ盗賊団だ。でも、やってることは大人顔負けだぜ。欲しいものは何だって頂いてきた。
食料も服も靴も、壷も絵画も宝石も馬も牛も、金貨に銀貨、俺たちに盗めないものはなんにもないんだぜ」
「それがなんだ」
「だから俺、お前を盗んでやるよ」
―――ぽかんと
丸くなった少年の黒い瞳を一瞬白い影が泳いで、それは月光かそれを背にする自分の姿か、後者ならば愉快だと、ハジは小さく笑った。
「…無理に決まってる」
開いた口を慌てて結ぶ。心乱されたことを、恥じるように。
無理じゃねえさ、この屋敷は既に下調べが済んだし、こうしてお前がいる場所も分かった。後は仲間達と打ち合わせて、掻っ攫えばいいだけだ。
「お前は銅像のように動かないでいてくれればいいさ。もしくは子馬だな。人間は盗んだことないけど、似た様なものだろ」
ハジはそう、陽気な調子で語った。少年は黙って俯くと、彼の計画に頑として首を振った。
「駄目だ、俺一人だけじゃ、いけない」
少し弱弱しくなった少年の声音は、潰されて聞き取りづらくなった。身を乗り出して聞き返す。
「どういう意味だよ」
「母さんがいる」
「母さん?」
「そうだ。母さんを、置いてゆけない」
俯いて口を固く結ぶ少年の面持ちは、今まで対峙していた大人びた態度とは一転し、年相応の幼さと寄る辺なさが浮かんでいた。
(…てっきり、親に売られた奴隷かと思ってた…)
この国では珍しくない話だ。メンバーの中にも勿論、そういう境遇の子供はいる。
「でも、じゃあお前の母さんはどうしてるんだよ。お前一人見世物にして、それでも大丈夫なのかよ」
我知らず責めるような口調になっていた。少年はきっ、と顔を上げる。白い髪が乱れて、赤らんだ彼の目を隠す。
「病気なんだ!!!」
叫んで、少年は顔を顰めた。喉を痛めたらしい。声を落として、続ける。
「病気なんだ。この屋敷の主人が、母さんの面倒を見てくれてる。俺は、その代わりに此処で働いてるんだ」
見世物として。言外に語る少年の歪んだ表情は、喉の痛みから来るものだけではないだろう。
暫し沈黙が流れた。無為に過ぎ行く時間と比例して、胸の奥にフツフツと湧き上がるものを、ハジは感じた。
それを笑顔の裏に押し込めながら、ハジは、出来る限り明るい口調で、話題を切り替えた。
「――その、首の枷」
ハジの指差した先、自分の首からぶら下がる黒い帯を、少年は見下ろした。
「昔聞いたことがある。奴隷の枷には魔法がかかってるものがあって、
主人に逆らったり逃げ出したりすると、締め付けたり酷い目に合わせるヤツがあるって」
お前のも、そういうものなのか?ハジの問いに、少年は小さく頷いた。
「…首が落ちるって、アイツは言ってた」
感情の篭っていない声に、ハジは息を呑む。少年はその幼さの割に、どこか物事を達観している節があった。
それはどのような恥辱と絶望と諦念の末に生み出されたものか。考えれば酷く苦々しいものが口内を満たした。
好都合だ、とハジは奥歯を噛み締めた。少年を、いや少年とその母を盗むだけでは足りない。枷を解除するには、この屋敷の主人の承認がいる。
ならばどんな手を使っても、どんな目に合わせてでも、この屋敷の主人から彼らを解放させて見せる。
人の命を何とも思わない、否、自分達以外の命を人とも思わない、傲慢な豚野郎ども。待っていろ、目にもの見せてやる。
ハジは一瞬、虚空を鋭く睨み付けた。
一瞬鋭くなった彼の視線に、我知らず身を固くする。
それに気付いたのか、彼はふっと笑いかけた。
「なあ、お前、なんて名前なんだ?」
きょとんと、彼の質問を心の中で反芻する。
「名前だよ、なまえ。いいか、俺はハジってんだ…って、もう名乗ったじゃねえか」
ケラケラ明るく笑い出す少年の、その柔らかな声に誘われるよう、思わず口が動いた。
「…白」
「シロ?」
―見た目通りじゃねえか、思わずそう返しそうになって、ハジはすんでで言葉を飲み込んだ―
「そっか、いい名前だな、白。なあ白。俺を信じろよ。白も、白の母ちゃんも、俺が必ず助けてやるよ」
待ってろよ、三日後は、新月だ。俺の魔法が最も役に立つ。その時必ず、お前らを盗んでやるよ。
ハジの明るい、だが深みのある声が、すとんと、自分の胸に沈んでゆく。
それは長らく仕えていた重苦しいものを溶かして、思わず表情が緩んだ。
ハジが、自分の顔を見て驚いたよう目を見開いたので、はっと顔を背けた。
「…期待はしない…」
小さい呟きは、彼の耳に届いただろうか。いずれにせよハジは、再び笑顔に戻っていたと思う。自分はその表情を、見つめることが出来なかったが。
「またな白。三日後だ、忘れるなよ。その時まで、どうにか生き延びろ」
すうっと、視界の端でハジが闇に溶け、それに驚き振り返った時には、もうハジの姿はどこにもなかった。
―まるで夢のような、ぼんやりとした穏やかさが、静かな朧月夜に漂っていた。
あれは夢なのだろうか。もしも夢であったとしても、構いはしない。
長らく、自分には悪夢のような現実しかなかったのだから。
だが、もしも、これが夢でないならば。
目の裏に浮かぶ、彼の姿を思い出す。胸元に光るペンダント。炒った豆のような、香ばしい色したボサボサの髪。
優しく笑っていた、この街の海のような青色。
白は静かに目を閉じた。
部屋の中は、相も変わらず濃い闇に閉ざされていたが、彼を満たしていたのは、奇妙な安心感であった。
【続】
後ろ髪を引かれるよう、名残惜しげに最後の観客が別荘屋敷を後にしたのは、月が中天に燻る真夜中であった。
マルハバンの季節―この祭りの季節はそう呼ばれる―には残念な空模様であるが、自分にとってこのほの暗さは好機である。
見世物を見逃し、不貞腐れた表情の門番を柱の陰から望みながら、ハジは小さく口の中で呟いた。
「…『融けろ』」
門番がその囁きを聞き咎め、柱の陰に目を向ける。が、濃い闇溜りには誰もいない。
首を傾げる門番の、その背後の闇の揺らめきは刹那。
揺らぎは波紋のように隣の闇へ移り、柱から柱へと渡り、やがて門から遠く離れた別荘屋敷の中庭、作り物の蘇鉄の陰にその動きを止めた。
用心深く息を潜めながら、闇の中に少年の姿が浮き上がる。素早く周囲に視線を走らすと、手近の建物の陰へ俊敏に飛び込み、また闇へと姿を消した。
闇の魔法はハジが唯一使える魔術であった。亡き父が仲間の諜報員に学んだものを、幾つか自分に教え授けたのだ。
我ながら相性がいいと思う。闇を渡る程度の魔法は、戯れ程度に覚えてしまえた。今では盗みに必需となったこの芸を、亡き父が知ればどう思うだろう(などとは考えないようにしている)
それでも幾らかの制限はある。あまり離れた闇へは渡れない。勿論、自分一人でしか渡ることはできない。
それゆえあの見世物ショーの後、訝しげな仲間らを誤魔化し先に帰らせ、自分ひとりがこの別荘に忍び込む羽目となった。
最も盗みの為の偵察ではない。既に建物の構造は、大方把握できた。自分の目的は、そこから少しずれたところにある―――いや。
「場合によっては、そうなるのか」
何となしに口に出た呟きは、豪奢なラグの上に寝そべる太った飼い猫の耳にのみ入った。
【5】
膝に頬を乗せた途端、ひりつく痛みが走った。
この部屋に投げ込まれた際、擦り剥いてしまったのだろう。いつものことと気を取り直して、壁にもたれ目を瞑る。
古い蔵は酷く黴臭かった。きっともう長く使われていないのだろう。高く積まれた酒樽の中身すら空なのかもしれない――その通りに決まっている。
あの用心深い主人が、此処に閉じ込めた子供―自分だ―が毒を入れる可能性を疑わぬ筈が無い。
そんなことが、出来る筈がないというのに。目を微かに開けて、また瞑る。闇に包まれたこの部屋では、明り取りの小窓から入る霞んだ月光さえ眩しい。
ふと―――
「見っけ」
突如、闇の中から声が聞こえ、ぎょっと体を強張らせる。
周囲を見回すも、埃っぽい小部屋の中には自分以外誰もいない。積み上げられた木箱や樽の陰に目を凝らすが、人影らしきものはない。
どこか別の部屋の声が、風に乗って流れてきたのか――一人合点し、傾げた首を元に戻す。
そして目の前にある二つの目と、目がばっちりと合う。至近距離に浮かぶそれは、笑うように弧を描いた。
「すっげえ、本当に白いのな、お前」
あと少しで、声を上げるところであった。
少年が声を上げないことに、ハジは感心した。
それでも動揺は凄まじく、後ずさるも背後は壁と気付くと、少年は小さな犬歯を剥き出しにし、眼を吊り上げ低く息を吐いた。
まるで猫のような威嚇におかしくなりながらも、怯えさせないようハジは一旦闇に消え、やや離れた、積み上げられた樽の上に腰を下ろした。
手品の如く、消えたり現れたりを繰り返すハジに、驚嘆と警戒の色を露わにしながら、少年は一言も発しない。
「そんなに警戒するなよ。言っておくけど、俺はおばけじゃないぜ。そら、立派な足だろ」
「・・・・・・」
ハジは明るく話しかけながらも、微量な光に照らされた少年を、素早く観察した。
ステージで見かけた姿と何ら変わらないが、淡い月光に浮かぶ少年は先程よりも白く見えた。その肌も、髪も。目だけが黒々と光っていて、よく目立つ。
丈の合っていない着物を着せられている為か、華奢な両肩が露わになっている。裾から覗く両手足も、折れそうなほど細い。
それゆえ、彼の風貌はさながら少女のような印象を受けた。だが険しい眼差しは獣のようで、決して少女の持つ柔らかさはない。
その刺すような視線を受けながら、ハジは大仰な手振りで、矢継ぎ早に語り始めた。
「俺はハジってんだ。これでも盗賊団のお頭なんだ、凄ぇだろ?」
「・・・・・・」
「ま、メンバーはみんな俺と同じくらいか、年下ばっかだけどさ」
「・・・・・・」
「お前と同じくらいのもいるんだぜ。ペンダっつって、体は一丁前にでけえんだけど、泣き虫なんだ」
「・・・・・・」
「皆孤児だ。親父もお袋もいねえ。裂けるまでケツを革鞭で叩くような性悪爺をブチのめしてきたのが、新入りのオロンゴでさ――」
「ケチな泥棒が、俺になんの用だ」
発せられた声音に、ハジはたじろいだ。少年の怒気に対してではない。少年のその、幼い容姿に不相応な、しゃがれた声音に身を固くする。
先程の炎で喉を焼かれたのか。いや、その一度ではあるまい。幾度となく熱気に潰され皹入った声帯の、微かに残る幼い響きが酷く切ない。
水の一滴も与えられていないのか、と。ハジは密かに拳を固く握った。食い込む爪の鋭い痛みに反して、柔く口角を上げる。
「俺たちはさ、そんな感じでガキらが集まって出来た、ちっちぇえ盗賊団だ。でも、やってることは大人顔負けだぜ。欲しいものは何だって頂いてきた。
食料も服も靴も、壷も絵画も宝石も馬も牛も、金貨に銀貨、俺たちに盗めないものはなんにもないんだぜ」
「それがなんだ」
「だから俺、お前を盗んでやるよ」
―――ぽかんと
丸くなった少年の黒い瞳を一瞬白い影が泳いで、それは月光かそれを背にする自分の姿か、後者ならば愉快だと、ハジは小さく笑った。
「…無理に決まってる」
開いた口を慌てて結ぶ。心乱されたことを、恥じるように。
無理じゃねえさ、この屋敷は既に下調べが済んだし、こうしてお前がいる場所も分かった。後は仲間達と打ち合わせて、掻っ攫えばいいだけだ。
「お前は銅像のように動かないでいてくれればいいさ。もしくは子馬だな。人間は盗んだことないけど、似た様なものだろ」
ハジはそう、陽気な調子で語った。少年は黙って俯くと、彼の計画に頑として首を振った。
「駄目だ、俺一人だけじゃ、いけない」
少し弱弱しくなった少年の声音は、潰されて聞き取りづらくなった。身を乗り出して聞き返す。
「どういう意味だよ」
「母さんがいる」
「母さん?」
「そうだ。母さんを、置いてゆけない」
俯いて口を固く結ぶ少年の面持ちは、今まで対峙していた大人びた態度とは一転し、年相応の幼さと寄る辺なさが浮かんでいた。
(…てっきり、親に売られた奴隷かと思ってた…)
この国では珍しくない話だ。メンバーの中にも勿論、そういう境遇の子供はいる。
「でも、じゃあお前の母さんはどうしてるんだよ。お前一人見世物にして、それでも大丈夫なのかよ」
我知らず責めるような口調になっていた。少年はきっ、と顔を上げる。白い髪が乱れて、赤らんだ彼の目を隠す。
「病気なんだ!!!」
叫んで、少年は顔を顰めた。喉を痛めたらしい。声を落として、続ける。
「病気なんだ。この屋敷の主人が、母さんの面倒を見てくれてる。俺は、その代わりに此処で働いてるんだ」
見世物として。言外に語る少年の歪んだ表情は、喉の痛みから来るものだけではないだろう。
暫し沈黙が流れた。無為に過ぎ行く時間と比例して、胸の奥にフツフツと湧き上がるものを、ハジは感じた。
それを笑顔の裏に押し込めながら、ハジは、出来る限り明るい口調で、話題を切り替えた。
「――その、首の枷」
ハジの指差した先、自分の首からぶら下がる黒い帯を、少年は見下ろした。
「昔聞いたことがある。奴隷の枷には魔法がかかってるものがあって、
主人に逆らったり逃げ出したりすると、締め付けたり酷い目に合わせるヤツがあるって」
お前のも、そういうものなのか?ハジの問いに、少年は小さく頷いた。
「…首が落ちるって、アイツは言ってた」
感情の篭っていない声に、ハジは息を呑む。少年はその幼さの割に、どこか物事を達観している節があった。
それはどのような恥辱と絶望と諦念の末に生み出されたものか。考えれば酷く苦々しいものが口内を満たした。
好都合だ、とハジは奥歯を噛み締めた。少年を、いや少年とその母を盗むだけでは足りない。枷を解除するには、この屋敷の主人の承認がいる。
ならばどんな手を使っても、どんな目に合わせてでも、この屋敷の主人から彼らを解放させて見せる。
人の命を何とも思わない、否、自分達以外の命を人とも思わない、傲慢な豚野郎ども。待っていろ、目にもの見せてやる。
ハジは一瞬、虚空を鋭く睨み付けた。
一瞬鋭くなった彼の視線に、我知らず身を固くする。
それに気付いたのか、彼はふっと笑いかけた。
「なあ、お前、なんて名前なんだ?」
きょとんと、彼の質問を心の中で反芻する。
「名前だよ、なまえ。いいか、俺はハジってんだ…って、もう名乗ったじゃねえか」
ケラケラ明るく笑い出す少年の、その柔らかな声に誘われるよう、思わず口が動いた。
「…白」
「シロ?」
―見た目通りじゃねえか、思わずそう返しそうになって、ハジはすんでで言葉を飲み込んだ―
「そっか、いい名前だな、白。なあ白。俺を信じろよ。白も、白の母ちゃんも、俺が必ず助けてやるよ」
待ってろよ、三日後は、新月だ。俺の魔法が最も役に立つ。その時必ず、お前らを盗んでやるよ。
ハジの明るい、だが深みのある声が、すとんと、自分の胸に沈んでゆく。
それは長らく仕えていた重苦しいものを溶かして、思わず表情が緩んだ。
ハジが、自分の顔を見て驚いたよう目を見開いたので、はっと顔を背けた。
「…期待はしない…」
小さい呟きは、彼の耳に届いただろうか。いずれにせよハジは、再び笑顔に戻っていたと思う。自分はその表情を、見つめることが出来なかったが。
「またな白。三日後だ、忘れるなよ。その時まで、どうにか生き延びろ」
すうっと、視界の端でハジが闇に溶け、それに驚き振り返った時には、もうハジの姿はどこにもなかった。
―まるで夢のような、ぼんやりとした穏やかさが、静かな朧月夜に漂っていた。
あれは夢なのだろうか。もしも夢であったとしても、構いはしない。
長らく、自分には悪夢のような現実しかなかったのだから。
だが、もしも、これが夢でないならば。
目の裏に浮かぶ、彼の姿を思い出す。胸元に光るペンダント。炒った豆のような、香ばしい色したボサボサの髪。
優しく笑っていた、この街の海のような青色。
白は静かに目を閉じた。
部屋の中は、相も変わらず濃い闇に閉ざされていたが、彼を満たしていたのは、奇妙な安心感であった。
【続】