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◎日
白瀧様の検査を開始する。
◎日 曇
『黒斑病』は細菌による敗血症から肌に黒斑が生ずる死病である。
『銅爛病』もその名の通り、皮膚や末梢神経の炎症により肌が焼けた銅のように爛れる奇病。これらはアビの三大公害病であるが、この二つは極僅かであるが治療法が発見されている
それはこの二つの病気の原因である細菌ウイルスが確認され、抗体及び毒素の中和が発見されたからである。
だが『白蝋病』は今を以ってその原因が分かっていない。
感染ルート、細菌の正体、抗体の有無、いずれもあきらかにされていない。
×日 雨
『白蝋病』の患者に共通する一つのケースとして、「以前外傷を負った部位付近」より発症するパターンが多いことが確認される。
そこから、特定の細菌に対する過剰な拒否反応が、やがて筋肉硬化の連鎖に至る、一種のアナフィラキシー・ショックではないかという仮定が浮かび上がった。
◎×■日 晴
前回の血液検査にて良好な結果が得られなかった為、再度白瀧様の血液を採取。
次こそは確実な結果が得られるといい。
×××日 雨
『白蝋病』のいやらしいところは、生活に支障無い部位より凝固することだ。
骨格筋、内臓筋、平滑筋、心筋、外から内側へ向かうよう、蝋化は侵食してゆく。
その為、発症から死ぬまでの期間が長い場合が多い。だが患者の大半は、自らの体の不自由さと激痛に耐え切れずに自害する。
特に、凝固したカルシウム等による筋線維の断裂、或いは体内機関の循環が滞ることから生じるリンパ腺の疼痛、肋間筋に退化による呼吸不全などは、患者にとって死に相応する苦しみである。
また、例えそれに耐え切ったとしても、最期に待っているのは完全なカタレプシー状態である。
最終的に患者は、脳と心臓の他、全ての動作機能を失う。さながら蝋人形のように。
◎日
マッサージが有効的かは未明だが、筋肉をほぐして悪いことはないだろう。本日より習慣付けようと思う。
気持ち良さそうな寝顔に安堵する。
◎××日 雨
検査の成果が得られる。
この世に神も仏もいない。
◎◎◎日
結論を記する。
血液凝固因子のうちVIII因子、IX因子の異常活性による凝固障害。
フィブリン・ポリマー間の架橋結合が筋線維への凝固作用を誘発させ難溶性繊維素内への異物(細菌αとする)の封入を試みるが、既に体外へ除去されているαを補足することは出来ず、命令信号の暴走による、一種の安定化フィブリンに至るまでのフィブリノーゲンの固有羅病という状態が仮定された。
つまり体内の白血球的役割の因子が、外傷から進入した細菌αを捕捉するため凝固命令を発する。
だが細菌αは体内に残留せず、その場で消滅する。しかし因子は細菌を追い続け、血液ならず筋繊維までも凝固させ奴を捕らえようとする。
何故このような現象が起こるのか。それこそが細菌αの役割だからである。
つまり因子を錯乱させ、異常行動に走らせること。
細菌αは、自らが組織を壊すのではなく、細胞を発狂させ自壊に繋げるというロクでもない働きであった。発症から自覚症状までに時間が開くのもこの所為と思われる。
つまり、細菌事態は無いので抗体はない。
アナフィラキシーショックの比ではない。体内組織の命令信号を狂わせるとは、なんと恐ろしい細菌だ。まるで悪魔のような、畜生、くそったれ!
◎日
血液凝固因子の異常ならば、瀉血による治療法を挙げるも、凝固第VIII因子に結合するヴォン・ヴィレブランド因子を刺激することにより、更なる凝固作用を誘発しかねない為却下。
また同時に血液内への投薬治療も、狂った凝固信号に異物と誤認されかねる恐れがある為、却下。
◎日
体温には注意したい。筋繊維が硬化すれば、体温調節が容易ではなくなる。
◎日
また難溶性繊維(凝固した筋繊維含む)の融解に対するタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)プラスミン等の投与は、正常な細胞因子を破壊する(敗血病等)恐れがある為却下。
つまり凝固した筋繊維は、二度と元に戻る術がない
(ペンの折れた後、此処から手記は途絶えている)
白瀧様の検査を開始する。
◎日 曇
『黒斑病』は細菌による敗血症から肌に黒斑が生ずる死病である。
『銅爛病』もその名の通り、皮膚や末梢神経の炎症により肌が焼けた銅のように爛れる奇病。これらはアビの三大公害病であるが、この二つは極僅かであるが治療法が発見されている
それはこの二つの病気の原因である細菌ウイルスが確認され、抗体及び毒素の中和が発見されたからである。
だが『白蝋病』は今を以ってその原因が分かっていない。
感染ルート、細菌の正体、抗体の有無、いずれもあきらかにされていない。
×日 雨
『白蝋病』の患者に共通する一つのケースとして、「以前外傷を負った部位付近」より発症するパターンが多いことが確認される。
そこから、特定の細菌に対する過剰な拒否反応が、やがて筋肉硬化の連鎖に至る、一種のアナフィラキシー・ショックではないかという仮定が浮かび上がった。
◎×■日 晴
前回の血液検査にて良好な結果が得られなかった為、再度白瀧様の血液を採取。
次こそは確実な結果が得られるといい。
×××日 雨
『白蝋病』のいやらしいところは、生活に支障無い部位より凝固することだ。
骨格筋、内臓筋、平滑筋、心筋、外から内側へ向かうよう、蝋化は侵食してゆく。
その為、発症から死ぬまでの期間が長い場合が多い。だが患者の大半は、自らの体の不自由さと激痛に耐え切れずに自害する。
特に、凝固したカルシウム等による筋線維の断裂、或いは体内機関の循環が滞ることから生じるリンパ腺の疼痛、肋間筋に退化による呼吸不全などは、患者にとって死に相応する苦しみである。
また、例えそれに耐え切ったとしても、最期に待っているのは完全なカタレプシー状態である。
最終的に患者は、脳と心臓の他、全ての動作機能を失う。さながら蝋人形のように。
◎日
マッサージが有効的かは未明だが、筋肉をほぐして悪いことはないだろう。本日より習慣付けようと思う。
気持ち良さそうな寝顔に安堵する。
◎××日 雨
検査の成果が得られる。
この世に神も仏もいない。
◎◎◎日
結論を記する。
血液凝固因子のうちVIII因子、IX因子の異常活性による凝固障害。
フィブリン・ポリマー間の架橋結合が筋線維への凝固作用を誘発させ難溶性繊維素内への異物(細菌αとする)の封入を試みるが、既に体外へ除去されているαを補足することは出来ず、命令信号の暴走による、一種の安定化フィブリンに至るまでのフィブリノーゲンの固有羅病という状態が仮定された。
つまり体内の白血球的役割の因子が、外傷から進入した細菌αを捕捉するため凝固命令を発する。
だが細菌αは体内に残留せず、その場で消滅する。しかし因子は細菌を追い続け、血液ならず筋繊維までも凝固させ奴を捕らえようとする。
何故このような現象が起こるのか。それこそが細菌αの役割だからである。
つまり因子を錯乱させ、異常行動に走らせること。
細菌αは、自らが組織を壊すのではなく、細胞を発狂させ自壊に繋げるというロクでもない働きであった。発症から自覚症状までに時間が開くのもこの所為と思われる。
つまり、細菌事態は無いので抗体はない。
アナフィラキシーショックの比ではない。体内組織の命令信号を狂わせるとは、なんと恐ろしい細菌だ。まるで悪魔のような、畜生、くそったれ!
◎日
血液凝固因子の異常ならば、瀉血による治療法を挙げるも、凝固第VIII因子に結合するヴォン・ヴィレブランド因子を刺激することにより、更なる凝固作用を誘発しかねない為却下。
また同時に血液内への投薬治療も、狂った凝固信号に異物と誤認されかねる恐れがある為、却下。
◎日
体温には注意したい。筋繊維が硬化すれば、体温調節が容易ではなくなる。
◎日
また難溶性繊維(凝固した筋繊維含む)の融解に対するタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)プラスミン等の投与は、正常な細胞因子を破壊する(敗血病等)恐れがある為却下。
つまり凝固した筋繊維は、二度と元に戻る術がない
(ペンの折れた後、此処から手記は途絶えている)
■首都カシャ
中央の宮殿地帯より大通りの坂道が五本広がっている。住居地帯は何層かに分れており、富裕層→商人・技術者・一般民→貧困層の順に末広がりになってゆく。
階層の中途では関所が築かれ、上の階層に行くには許可を要するが、白瀧の政策により現在関所は全て撤廃された(後の楽市楽座である)
アビの中では瘴気の薄い方。更に建築物の殆どは砂壁であり、汚れた大気の濾過作用を勤めている。
宮殿地帯は意図的に土地を底上げしているため、瘴気の影響を受けにくく、王族貴族の中にはガスマスクの存在を知らぬまま一生を過ごす者が多い
■クーデター後の行政
クーデター後、以前の貧富格差は若干改善されたものの、未だにヒエラルキー思想は根強い。
義勇兵制度はその打開政策の一環で、身分出自学歴不問、但し志願者による徴兵制は特に貧困層の希望が多く、アビが戦争を続ける理由、また目的でもある。
白瀧らの最終的な理想的は、それこそ信長の行った兵農分離だが、耕す土地の無い彼らに「農」民はおらず、その代わり(或いは前座)が各地へ派遣される開拓民である。
彼らはアビ内で人の住める土地を見つけ、発展させる為同じく志願者で作られた使節団である。
働かざるもの食うべからずがモットー。
だが職人・商人・軍人以外の職が貴族らの奴隷職か風俗商売等しかなかったアビ住民によって、この制度は大いに賛同の意を得た。
いずれも命の危険を伴う過酷な任務ではあったが、志願者は後を絶えない。
■アブダ・ウバラ湖の不思議
湖より海に流れる水路はない。全ての汚染物は、この二つの湖に蓄積してゆく。
東西二つの大河から大量の水が流れ込むにも関らず、一向に水位が増さない様はアビの七不思議である。
アビの人々はこの湖の底は地獄に繋がっていると信じ、深く畏怖している。
「ねえサラ、この赤黒い雲の向こうに、美しく澄み渡る空があることを知っているね?」
「ええ兄様、絵本で呼んだことがあるわ。でも、嘘のよう…空が青いだなんて」
「でもきっと、向こう側の空から見れば、こんなに汚れた空があることこそ信じられないことなのだろう。
それと同じ、この美しい宮殿の壁の向こうには、僕達が想像も出来ないほど貧しい人々がいるのだよ。
僕達はこのままでいいのだろうか。僕達があの壁の向こうの人々に手を伸ばすことは
青い空が、汚れた空の向こうから、僕らに逢いに来てくれるくらい、嬉しいことではないかな」
「まあ、それは素敵なことだわ」
「片方の世界だけが幸福ではいけないんだ。世界は繋がっているのだから、僕らは皆で幸福になるべきなんだよ」
「そうね兄様。私、そんなアビを見てみたい」
「できるさサラ!僕と、サラと、ヴィヴィが大きくなったら三人で、このアビを一つにするんだよ」
クーデター前夜のこどもたち
奴らは風上から現れる